生産者の熱い思いを知り、
水なすを粋なスイーツに
DAICHOでは、志あふれる学生がサークルを作り、自主的に学びを深めています。その一つが「食文化研究サークル」。
今までに、地元泉州地域の特産物に着目し、「里芋タルト」「アナゴバーガー」等を開発してきました。今回、挑戦するのは漬物で全国にファンを持つ「水なす」。第65回全国農業コンクールで名誉賞に輝いた貝塚の「中出農園」の協力を得て、商品開発がスタートしました。
実際に農園を訪れ、農作業の苦労を伺いました。しおれた花が実についたままだと色づきが悪くなること、日光が当たりすぎると艶がなくなり皮が固くなること、天候や温度に応じて決め細やかな水管理が必要なこと―――。学生達は驚きの表情を浮かべ聞き入りました。
学生達は実際に畑に入り、花殻を取る作業や収穫も体験。
生産者の苦労を知り、学生達は「素材の特徴を生かす」ことを重視し4品のスイーツを考案。水なすゼリーは、なすの紫にこだわり、皮から赤色の色素を抽出し色づけました。食品がくの知識を生かしたものです。水なすパンは、水なすについている野生酵母を利用して作成。ユニークなアイデアが続々と学生から提案され、何度も試作を重ねました。
試作品のプレゼンテーションは、中出農園ご一家や就職で関係性のあるホテルや企業を招いて開催。中出農園の長男、庸介さんは「水なすのデリケートな味を生かしてくれている」と喜び、次男の達也さんは「学生のチャレンジ精神に刺激を受けた。さらに美味しい水なすを作っていきたい」と笑顔をほころばせました。
プロジェクトフロー
ミッション―――
水なすのスイーツ開発
泉州野菜のブランド化と販売促進について考える。生産者に寄り添う料理人、パティシエが話題になっていることから、アイデアを形にする過程を学ぶ。
農園見学
実際に畑に入り、生産者から収穫までの過程や苦労について教わる。農作業や収穫も体験して、五感を通して作物への理解を深める。
企画・試作
アイデアを温める。毎日の実習で学んだ知識を生かし、今回のプロジェクトを担当する製菓講師から技法を学ぶ。応用力をつけ、表現力や商品価値を見いだす力をつける。
プレゼンテーション
中出農園やホテル、百貨店などの企業を審査員に招いて開催する。自分のこだわりや工夫をわかりやすく伝える。表現する力をつければ、就職面接にも強くなる。
商品化
プレゼンテーションでの審査員のコメントやアンケートを基に、商品にするものを決める。改良を加えて、学校内のショップや百貨店で販売する。
食酢のトップメーカーに
型破りな創作料理を提案
お酢料理の開発は、100年余りの歴史を持つ醸造酢メーカー「タマノイ酢株式会社」との共同企画です。お酢を身近に感じてもらいたい、学生ならではの型にはまらないアイデアでユニークなレシピを開発してもらいたい。そんな期待を受けました。米酢、黒酢、リンゴ酢、バルサミコ酢、プルーン酢など、さまざまな商品をご提供いただきました。
学生の考案したメニューは、野菜のピクルスを利用したハンバーグ、鶏肉の甘酢煮込み、ローストポークなど8種類。
ピクルスには、ニンジン、レンコン、タマネギを使っています。食べやすく、食感も良くなるよう、みじん切りの大きさを何度も試しました。甘酢煮込みは、肉を柔らかくする酢の効果を利用しています。ローストポークは、肉が硬くならないよう約70度でゆっくりオーブン加熱する「低温調理」を取り入れました。食欲をそそる見た目にしようと、肉にカラフルなフルーツソースを添えました。酢と相性のよい果物や用いる酢の種類を何度も試して、リンゴとブドウのソースに落ち着きました。
お酢料理に挑戦した田中玲葉さんは「お酢について調べたら、煮詰めるとうまみが出ることがわかった。酸味の調整は難しいが、ユニークな調味料。試行錯誤が楽しく、企業との共同企画はプロの仕事に近づける気がする」と振り返り、藤本奈津美さんは「新しい発見がいっぱいあった。酢の扱いが難しく不安だらけだったが、商品開発は苦労するほどやりがいがある」と自信を深めていました。
学生の作った料理を食べたタマノイ酢(株)の宮田真有さんと幕田千文さんからは「ピクルスを入れたハンバーグがさっぱりとして、まとまった味だった。時短調理にもなりそうで、面白いアイデアだと感心した」と評価していただきました。
プロジェクトフロー
ミッション―――
お酢料理のレシピ考案
タマノイ酢(株)から「お酢を身近に感じ、興味を持ってもらうきっかけにしたい」とレシピ考案のオファーがある。学生ならではの独自性あるものに期待を受ける。
企画・試作
タマノイ酢(株)から提供された商品を試す。味覚や嗅覚で違いを体感し、素材との相性や浸透の差も知る。実習を通してインプットした技術をアウトプットする力をつける。
プレゼンテーション
タマノイ酢(株)の社員に審査を受ける。料理を試食してもらいながら、食材の魅力や背景を伝える。「人においしいものを提供する」力に加え、PRする力も磨く。
レストラントレーニング
インターンシップなどで関係のある企業を招き、プレゼンテーションで高い評価を得たレシピを提供する。段取り、スピード、サービスなど手順も確認する。
商品化
レストラントレーニングの参加者の声を生かしてレシピを完成させる。学校内のレストランで一般の方へも提供し、レシピはタマノイ酢(株)のホームページで公開する。